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新入社員向け安全運転教育の必要性
2017年8月18日
リスクマネジメント事業本部
モビリティコンサルティング部
シニアコンサルタント
落合 律
自動車事故防止コンサルタントがお客さまから自動車事故防止に関するご相談を受けてソリューションを提案するに当たり、まず「現状分析」をすることは定石である。特に「いつ」「どこで」「だれが」「どのような」事故を起こしているかについて調べる「事故分析」は、事故の再発防止に一定の指針を示してくれるので有効である。
事故分析で示される要因の中で、筆者が着目している点は、高齢ドライバーはもちろん、若年ドライバーの事故件数の多さである。実際に、この要因の解決に向け、課題を抱える企業は多い。特に、20歳代前半の若年ドライバーによる10万人当たりの交通事故は、各年齢層の中で最も多い(図1)。
図1 年齢層別免許保有者10万人当たりの交通事故件数
(出典:警察庁統計「原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別・年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数(平成27年中)」をもとに当社作成)
また、若年ドライバーの主な事故の要因を調べてみると、事故は「運転操作不適」に示される「運転技術の未熟さ」と、「安全不確認」「脇見運転」「動静不注視」といった「交通安全に関する知識・意識の低さ」によるものといえる(図2)。この点については、企業の自動車事故防止担当の方へのヒアリングから、普通免許取得可能な年齢(18歳)に達し運転免許を所有したものの、自動車を運転しないまま数年経ち、運転技能や知識・意識の低下した若年ドライバーが多く存在していることが要因の一つではないかと考えられる。このような「ペーパードライバー」では、企業に就職した後、新入社員として、業務上、自動車の運転を余儀なくされた場合、慣れない運転や業務多忙による安全不確認などで交通事故が起こることは、ある意味、当然かもしれない。
図2 年齢層別法令違反別事故発生件数
(出典:警察庁統計「原付以上運転者(第1当事者)の法令違反別・年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数(平成27年中)」をもとに当社作成)
前述のように、新入社員の運転は「技術」「知識」「意識」いずれの面も未熟な部分が多く、事故につながりやすい。したがって、事故防止に向けた安全運転教育では、バランスのとれた教育が必要不可欠である。
まず「技術」面であるが、この向上には、自動車教習所による実技指導が効果的である。「ペーパードライバー」は技術もさることながら、実際に運転するにあたり、認知、判断の部分も不安な点が生じている場合が多い。そのため、実車教育を通じて運転実技の専門家に運転技術を確認してもらうことは、若年ドライバーがこれから運転をする上で感じている不安を解消できるだけではなく、運転する際の注意点について改めて気づくことができるという意味でも有効である。
次に「知識」「意識」面については、交通安全講習会の開催が効果的である。新入社員の大半は、自動車の運転経験も浅く、しかも、初めて社会人として社会に出ると考えられるので、業務以外で自動車を運転することとの違いを明確に認識できていないケースが多いと思われる。
したがって、新入社員への教育では、企業の所有する自動車(社有車)を運転することにについて責任を自覚させ安全運転への心構えをさせるために以下の点を講習内容に盛り込むことが必要であると考える。
(1)交通安全に対する会社の姿勢
(2)社内の交通事故発生状況と事故の特徴
(3)交通事故と運転者や企業の責任
(4)安全運転管理の重要性と安全運転管理に関する規程類
(5)危険予測トレーニング
(6)運転適性診断
これらの中では、事故防止の観点から、筆者は特に「⑤危険予測トレーニング」が新入社員向けの事故防止教育として効果的であると考えている。
一般的に新入社員は、社会人として将来に向け期待に胸をふくらませている年代であり、自ら危険運転をしようとする社会性の低い無謀な人は少なく危険敢行性は低い。しかし、新入社員は危険予測に関する経験や知識は浅く危険感受性が低いため、安全確保行動が限定的であるといえる。そのため、危険感受性を高める教育が彼らには必要である。交通場面に潜むさまざまな危険とその危険を回避するための自動車運転方法などについて気づきを得ることは、実は多くの事故防止の専門家が認める指導方法である。
尚、当社の手掛ける新入社員向け自動車事故防止コンサルティングでは、新入社員の「運転技術」「交通安全に関する知識・意識」をバランスよく向上するために、個社別に問題点を抽出し、適切なソリューションを提案している。具体的には、全国の自動車教習所と連携した「実車教育」、ビジュアルを多く用いたり小集団活動に倣った「参加型研修」、集合型の研修が難しい企業においては「e-ラーニング」など多彩なメニューで、年間を通じてきめ細かくフォローし、事故削減に結びつけている。ご関心をお持ちの際はご連絡をいただければ幸いである。
落合 律
リスクマネジメント事業本部
モビリティコンサルティング部
シニアコンサルタント
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