- TOP
- 熱中症対策 “最前線” ~現場からのレポート~
腕時計型ウェアラブル端末を着用している現場スタッフの方々 @株式会社タカヤマ PDセンター
地球温暖化に伴い、年々、深刻化する熱中症リスクへの対応は急務な課題となっています。
この課題への対策として、政府は、2030年を目標に、熱中症による死亡者数を直近5年間から半減させることを目指す「熱中症対策実行計画」を閣議決定しました。
このような状況の中、排水処理施設の清掃・工事から廃棄物の収集運搬・処理まで一貫した環境事業を営む「株式会社タカヤマ」では、定期的な水分・塩分補給や休憩等の基本的な熱中症対策に加えて、昨年の夏シーズンから新たにウェアラブル・デバイスを利用し、作業者の脈拍等を計測し、作業者の体調を管理することで熱中症リスクを軽減するサービス「労務・熱中症管理サービス“みまもりふくろう*1”(以下、本サービス)」を導入しています。
今回は、同社において、本サービスを導入した経緯や熱中症対策の取り組み状況等をご紹介します。
*1)みまもりふくろう:
リストバンド型デバイスにより、作業者の脈拍や位置情報をリアルタイムに計測し、労務管理をサポートするウェアラブルIoTサービス
参照Webサイト:https://www.sompo-rc.co.jp/services/view/184
株式会社タカヤマ
・本社 :埼玉県所沢市南永井37-9
・事業内容 :排水処理施設・各種槽清掃
排水処理施設の修繕工事
産業廃棄物の収集・運搬
一般廃棄物の収集・運搬
中間処理
・社員数 :136名(2023年6月1日時点)
※ごみ収集スタッフ:30~34名
株式会社タカヤマ
エリアサービス部 マネージャー 部長 立神 幸一(たてがみ こういち)さん
エリアサービス部 クリーンサービスライン 課長 渡部 健一(わたべ けんいち)さん
エリアサービス部 地域サービスライン 山本 公俊(やまもと きみとし)さん
“熱中症疑いのスタッフが毎年4~5名発生” 現状の注意喚起だけでは不十分
本サービス導入前の熱中症予防への取り組み状況や課題についてお聞かせください。
(立神さん)
日頃からミネラルウォーターやスポーツドリンクの他、塩飴や経口補水液などを支給して、熱中症予防に努めてきています。
ごみの収集作業は、かなりの重労働になるので、こまめに休憩をとり、水分補給するように呼び掛けてきましたが、毎年4~5名の熱中症疑いの症状のスタッフが出ていました。
本サービスのような、ウェアラブル端末を利用した先進的な仕組みを導入されようと考えられた経緯・理由を教えてください。
(渡部さん)
今、お話したように無理をしないよう呼び掛けていましたが、忙しい日には休憩をしないで、“頑張ってしまう”ので、現状の注意喚起だけでは不十分だと感じていました。
そんな時に当時の社長が「みまもりふくろう」の存在を知り、ウェアラブル端末による熱中症管理サービスの情報を収集するよう指示があり、その導入を検討しました。
―――導入に当たっては、経営層のご意向が大きかったのでしょうか?
(立神さん)
そのとおりだと思います。元々、当社の社風として“人を大事にする会社”なので、導入に当たっては、その点も大きかったと思います。
“スタッフは頑張ってしまう” 管理者から休憩や水分補給を促すことが重要
(渡部さん)
理想を言えば、スマートウォッチのようなサービスが良かったのですが、コストが高かったので…。その点、「みまもりふくろう」は1台13,000円(税抜)だったので、これ位のコストなら何とか導入できそうだと思いました。
また、このサービスの契約では、夏場の暑い時期(最低3か月間)だけ利用して、秋に一旦、休止して、翌年の初夏から利用を再開することができます。
利用していない期間のコスト負担がないことが決め手になりました。
【みまもりふくろうの特長】
・ウェアラブル端末(活動量計):13,000円(税抜)/台
・利用料金(月額費用):活動量計1台当たり、2,000円(税抜)
※活動量計が10台以下の場合は、一律20,000円(税抜)
・最低利用期間:3カ月
それとセルフケア*2のサービスでは、本人自身がアラートには、気が付かないし、気付いたとしても“頑張って作業を続けてしまう”と思います。この「みまもりふくろう」のような管理者から休憩を電話で指示するような仕組み(ラインケア)が必要だと思います。
繰り返しになりますが、自己判断任せでは熱中症を防ぐことはできないため、このようなラインケアの仕組みは非常に有効だと思います。
*2) セルフケア:ウェアラブル端末自体が鳴動等することで着用者自身が熱中症予防に気を付ける方法
*3)ラインケア:着用者だけでなく、管理者や同僚等にも熱中症リスクが高まった作業者の状態を知らせ、
管理者等の第三者から休憩等を促す方法
【みまもりふくろうのアラート通知】
アラート閾値を一定時間継続して超えた場合に管理者や着用者等にアラートメールを通知する。
“走りながらのごみ収集作業” 熱中症にならないか、心配
ウェアラブル端末を着用されているスタッフの方々の職務内容を教えてください。
(渡部さん)
一般家庭のごみ収集業務に携わるスタッフに着用してもらっています。
ごみ収集運搬車ごとに2名のスタッフで作業していますが、運転兼ごみ収集の作業をするスタッフではない、助手スタッフは、ごみ収集作業だけを担当しており、車には、ほとんど乗らずに、走りながら収集作業をしているので、とくに心配しています。
―――今年、ウェアラブル端末を追加購入されたのは…
(立神さん)
正直、昨年は、このサービスを試しに導入してみたのですが、使ってみて効果的と感じたので、今年入社した新人スタッフと長距離での大型車両の運転業務を実施している50代後半のスタッフにも新たに着用してもらうことにしました。
“大型モニターにスタッフの体調を掲示” 危険状態になったら、すぐにスタッフに連絡
管理者によるスタッフの方の体調の状況確認の方法はどのように実施していますか?
(渡部さん)
スタッフの体調状況を現場事務所の大型モニターで確認して、危険な状態(モニター画面の着用者アイコンが“赤”に変わる)になったら、すぐにスタッフに電話して休憩をとるように連絡しています。
現場事務所内の大型モニターにスタッフの状況を常時掲示している
―――どれくらいの頻度でアラート通知されていますか?
(渡部さん)
今日も既に2回ほどアラートに気付いて、スタッフに電話連絡しています。昨年の夏には、日に5~6回程度、連絡することがありました。
―――休憩することで、作業効率が低下することにはならないでしょうか。
(山本さん)
ならないですね。むしろ、そこで休憩してもらって、体調を万全にしてもらった方が作業効率は上がると思います。
当社の社風でもありますが、安全第一、人命優先です。
(渡部さん)
スタッフには、「(ごみ焼却場の搬入)時間に間に合わなくても良いので、休憩するように…。」と伝えています。
本サービス導入後の熱中症疑い発症事例は、“ゼロ”に
本サービス導入後、熱中症の発症状況に変化がありましたでしょうか?
(渡部さん)
アラートが出た時に何度かスタッフに対して、注意喚起ができたので、未然防止には役立っていると思います。
実際に、昨年、ウェアラブル端末を着けていたスタッフの熱中症疑いは“ゼロ”でした。
本サービス導入後、作業者の方の熱中症予防に対する意識に変化など間接的な効果がありましたか?
(立神さん)
社員の健康管理を会社側が積極的に行っていることで、社員満足度の向上にも繋がっていると思います。
当社は健康経営優良法人に認定されていることもあり、また、SDGs推進にも力を入れているので、「みまもりふくろう」の導入は、当社として、それらの取り組みの証しにもなり、また、対外的なアピール材料にもなっています。
株式会社タカヤマ PDセンター構内の掲示板
管理者の立場から本サービスに関するご感想やご意見等をお聞かせください。
(立神さん)
このサービスは、シンプルで使いやすく、不便に感じることはありませんが、よりバージョンアップされ、さらにスタッフを熱中症から守る効果が上がるようなシステムになっていくことを期待します。
管理者が体調を見てくれているので、作業に集中できる
作業者(着用者)の立場から本サービスに関するご感想やご意見等をお聞かせください。
(山本さん)
このような管理ツールを使って、会社側が社員の体調を見守ってくれているので、安心感があります。
スタッフとしては、自分自身で体調の具合に気をとられなくて良いので、作業に集中できると思います。
<編集後記>
この度は、当社取材を快くお引き受けいただき、また、長時間に亘るインタビューにも丁寧にご対応いただき、ありがとうございました。エリアサービス部の立神様、渡部様、山本様に、改めて、感謝申し上げます。
タカヤマ社では、弊社の労務・熱中症管理サービス「みまもりふくろう」を昨年の夏からご導入いただき、本年は、6月からご利用を開始していただいております。
取材当日、同社PDセンターを訪問した際に、すれ違うスタッフの皆さんから「こんにちは」、「いらっしゃいませ」と挨拶をいただきました。また、構内や室内の整理・整頓も行き届いており、“社員教育が徹底している会社” との印象を強く受けました。
今後も “人を大事にする社風”のもと、熱中症予防のみならず、安全・健康への取り組みを、より一層発展されることをお祈り申し上げます。
労務/熱中症リスクコンサルティング「みまもりふくろう」に関するお問い合わせ