「攻めのカスハラ対策」で従業員を守る!  ~②平時のカスハラ対策実務とその重要性~

コンプライアンス NEW

2024年7月18日

コーポレート・リスクコンサルティング部

人的資本グループリーダー 上級コンサルタント
産業カウンセラー

西 彩奈

前回のコラムではカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に関する基礎知識について概説した。そのなかで、リスクマネジメントの観点からカスハラ対策には平時・有事併せて8つあることを説明した。第2回目の今回は、このうち「平時の対策」に焦点を当てたい。

平時に取るべき対策は、前回のコラムで挙げた通り、図表1の①から④の4点であるが、それぞれのポイントは、図表内に記載の通りである。

 

図表1 平時のカスハラ対策 [1]

 

カスハラ対策に熱心な企業・組織は、これらの対策に既に取り組んでおり、現在は平時の対策にあまり目が向いていないかもしれない。また、カスハラ対策に関して企業・組織からの相談を受ける弊社によくある問い合わせとして、「カスハラにあった際の対応について研修やレクチャーをして欲しい」というのがあり、このように「有事」対応に着目する企業・組織は多い。しかしながら、平時の対策を軽視してはならず、以下に理由を示す。

 

カスハラが発生してしまった後(有事)に、企業・組織側で対応できることは限られている。つまり、要求を受け入れるか、断るかしか選択肢は残されていない。もちろん、出来るだけ炎上しないように、カスハラ行為者への対応方法など理解しておくべきことはあるが、いわゆる謝罪の仕方などテクニック論に落ち着いてしまう。すなわち、有事に出来ることをふまえると、平時の対策の重要性が浮き彫りになるわけだが、このことは、「カスハラ」というリスクを「地震」という分かりやすいリスクに置き換えて説明すると、よりイメージがつきやすいのではないだろうか。

 

例えば、地震発生時に、取りうる行動は、危険な場所なら、その場から逃げるか、落下物から身を隠すなど限られたものになる。しかしながら、地震が発生する前、平時には、建物の耐震性を高める、備蓄品を準備する、安全な避難場所をあらかじめ確認しておくなど、被害や混乱を最小限にするための方策が多々挙げられる。「カスハラ」というリスクにおいても同様に、平時の対策を怠らないことが肝要である。

但し、平時に、製品やサービスの品質向上に取り組んでも苦情が発生し、結果的にカスハラにつながるケースがあるかもしれない。また、はじめからカスハラをしようと乗り込んでくるお客さまもいるかもしれない。とはいえ、平時の対策をしっかり実施し、カスハラが起きうるリスクを発生前にできるだけ防止することが、カスハラ対策の要諦である。カスハラ被害の可能性に晒されている現場の従業員を守るためにも、上述のような平時の対応に、企業・組織のトップが、どこまで実直に、適切に対応できたかが、カスハラの発生頻度の減少やカスハラ事案の縮減につながると言えよう。

 

次回は、カスハラの有事対応、カスハラが発生した場合に企業・組織が取るべき対策について触れたい。

 


[1]①~④の項目は、厚生労働省,カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(アクセス日:2024-06-03)より、それぞれのポイントは当社作成。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

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